空き家を民泊にするまでにかかる費用(開業までの試算)

空き家を宿泊施設として使えるようにするまでの費用を、工事・消防設備・申請・備品に分けて積み上げました。住宅として直す場合との差額はどこに出るのか、稼働までに何か月かかるのかを整理しています。

改修後の古民家の座敷と縁側
改修後の古民家の座敷と縁側

空き家を宿泊施設として使えるようにするまでの費用を積み上げます。「住宅として直す場合と何が違うのか」という視点で読んでいただくのが分かりやすいと思います。

1. 住宅としての改修

まず、普通に住める状態にするための工事です。

工事金額
屋根 部分補修・雨樋交換340,000円
給湯器交換210,000円
浴室 ユニットバス化1,250,000円
洗面・脱衣室380,000円
トイレ 2箇所420,000円
台所680,000円
床 張り替え(3室)460,000円
内装・壁の塗り替え520,000円
電気工事(配線・照明・分電盤)480,000円
建具調整・網戸130,000円
小計4,870,000円

ここまでは、住宅として直す場合とほぼ同じです。

2. 宿泊施設にするために追加で必要なもの

ここからが、住宅との差です。

項目金額補足
自動火災報知設備480,000円特定小規模施設用。延床と間取りで変動
誘導灯120,000円
消火器24,000円
非常用照明90,000円
避難経路図の作成・掲示15,000円
図面作成(消防・届出用)150,000円
鍵の電子錠化85,000円非対面チェックイン用
Wi-Fi工事・機器60,000円
防犯カメラ(外部のみ)45,000円屋内には設置しない
小計1,069,000円

消防設備が約71万円。 ここが住宅との最大の差です。住宅として直すつもりの予算に、そのまま70万円が上乗せされます。

必要な設備は建物の規模・階数・間取りで変わります。着工前に、必ず所轄の消防署で事前相談してください。 工事が進んでから指摘されると、天井を開け直すことになります。

3. 申請・手続き

項目金額
消防法令適合通知書の取得0円(手数料なし)
住宅宿泊事業の届出0円
行政書士への委託180,000円
登記事項証明書等5,000円
小計185,000円

届出自体に手数料はかかりませんが、必要書類が多く、図面の要件もあります。自分で進める場合は、書類の差し戻しで数か月止まることを覚悟してください。

4. 備品

意外と大きいのがここです。

分類金額
寝具(6名分・予備含む)320,000円
家具(座卓、椅子、収納)280,000円
家電(冷蔵庫、洗濯機、電子レンジ、TV、エアコン2台)540,000円
調理器具・食器120,000円
リネン類(3セット分)150,000円
アメニティ初期在庫40,000円
小計1,450,000円

エアコンは、宿泊施設では各居室に必要と考えたほうがいいです。ここを削ると評価に直結します。

5. 総額

区分金額
住宅としての改修4,870,000円
宿泊施設としての追加1,069,000円
申請・手続き185,000円
備品1,450,000円
合計7,574,000円

物件の取得費は別です。取得費を250万円とすれば、開業までの総投資は約1,007万円になります。

6. かかる期間

期間内容
1〜2か月目残置物の処分、現況把握、消防署との事前相談
3か月目設計・見積・業者選定
4〜6か月目工事
7か月目消防検査、届出、備品搬入、撮影
8か月目運用開始

8か月。 これは順調に進んだ場合です。工事が遅れれば簡単に10か月を超えます。

その間、固定資産税、火災保険、電気・水道の基本料金は発生し続けます。月あたり約1万5,000円、8か月で12万円。収入ゼロの期間にも支出は出ていくという点を、資金計画に入れておいてください。

まとめ

住宅として直す予算に、そのまま250万円を足す。 これが宿泊施設化の目安です。内訳は消防設備で70万円、備品で145万円、申請で20万円、残りが仕様グレードの差。

そして最も見落とされやすいのが、運用開始までの空白期間です。物件を取得した時点から費用は出ていきますが、収入はゼロ。8か月分の維持費と、その間の生活費まで含めた資金計画が必要になります。

「空き家を民泊にすれば収益化できる」という話は間違っていませんが、1,000万円の投資と8か月の準備期間を伴う事業である、というのが実際のところです。

出典・参考資料

  1. 国土交通省・厚生労働省・観光庁住宅宿泊事業法(民泊新法)にもとづく届出制度
  2. e-Gov法令検索消防法施行令(特定小規模施設用自動火災報知設備等)

制度・税率・統計は改正や更新があります。実際の判断にあたっては、必ず最新の一次資料と、 宅地建物取引業者・税理士・建築士など専門家の確認を経てください。