築87年・250万円の古民家をどう判断するか(内見のモデルケース)

空き家バンクによくある条件の物件を例に、内見でどこを見て、何を概算し、どこで見送りを決めるのかを順番に追いました。屋根・小屋裏・床下・水回りの確認手順と、総額の組み立て方の実例です。

丘陵地の集落に建つ築古の木造平屋
丘陵地の集落に建つ築古の木造平屋

内見で何を見るかを、条件を1つに固定して順番に追ってみます。空き家バンクに実際によく出てくる条件を組み合わせた、次のような物件を想定します。

想定する物件

項目内容
所在北九州市内・丘陵地の集落
構造木造平屋(一部2階)
築年数87年
延床104㎡
土地340㎡
価格2,500,000円
空き家期間約4年
前面道路市道・幅員4.2m
上下水道公営水道あり/浄化槽(設置11年)

接道は満たしており、再建築も可能。ここまでは条件が良い部類です。この段階では、まだ何も判断できません。

1. 外から見る

最初に見るのは屋根です。地上から見て、瓦が波打っていないかを確認します。波打ちは下地(野地板・垂木)が動いているサインで、部分補修では収まらない可能性を示します。

棟の漆喰が新しければ、数年以内に部分補修が入っています。新しい部分があるということは、そこが傷んでいたということでもあります。

次に雨樋。外れて垂れ下がっていれば、その真下の基礎際に雨水が落ち続けていたはずです。その位置を覚えておいて、あとで床下から確認します。 これが内見の効率を上げるコツです。

外壁がモルタルなら、クラックの幅を見ます。0.3mm以下(名刺が入らない程度)なら構造的な心配は小さく、それ以上なら要確認です。

2. 小屋裏を見る

点検口から上がれるなら、必ず見てください。ここが内見で最も情報量の多い場所です。

見るのは水の跡です。

  • 乾いた黒いシミ … 過去の雨漏り。すでに止まっている可能性
  • 白っぽい筋 … 雨水が繰り返し通った跡
  • 垂木を指で押して沈む … 腐朽が進行。要交換

重要なのは、シミの位置が屋根の谷(屋根面が合わさる部分)と一致していないかです。谷板金は雨漏りの定番箇所で、直すには足場が必要になります。

シミがあっても、垂木が健全で乾いていれば「止まっている雨漏り」です。慌てる必要はありません。判断が変わるのは、湿っている場合です。

3. 床下を見る

床下収納や点検口から覗きます。

  • 土が湿っている … 防湿シートなし。土台の腐朽リスクが継続する
  • 蟻道(土でできた細い道) … シロアリ。要駆除
  • 束石の沈下、柱の傾き … 不同沈下の可能性。費用が読めなくなる

外で見つけた「雨樋が外れていた位置」を、ここで確認します。その真下の土台が変色・腐朽していれば、原因と結果がつながります。

腐朽の範囲が1〜2m程度なら、継ぎ足しての部分交換で対応できます。3mを超えると話が変わります。 ここが一つの分岐点です。

4. 水回りを見る

在来のタイル張り浴室は、目地が割れていても防水層が生きていることがあります。ただし開けてみないと分かりません。 判断できない項目は「最悪の想定で見積もる」のが原則です。

給水管が鋼管なら、赤水の可能性が高く、更新前提で考えます。

浄化槽は設置年と清掃記録を確認します。使える浄化槽が残っているかどうかで、100万円前後の差が出ます。 ここは大きい。

5. 総額を組み立てる

見た内容から、住める状態にするまでの費用を積みます。

工事概算
屋根 全面葺き替え(下地補修含む)2,800,000円
雨樋 全交換180,000円
土台の部分交換・防蟻処理550,000円
床下 防湿シート+砂利220,000円
給水管の更新400,000円
浴室 ユニットバス化1,200,000円
台所700,000円
電気 分電盤・一部配線350,000円
内窓(4部屋)320,000円
内装・建具調整500,000円
工事費 計7,220,000円

これに物件価格250万円と、諸費用(仲介手数料33万円+登記・印紙など約15万円)を足します。

総額およそ1,020万円。

6. 判断する

この条件なら、見送りが妥当です。

理由は総額の大きさではありません。同じ地域で、屋根が済んでいる物件が700万〜900万円で出ることがあるからです。1,000万円を投じるなら、比較対象は他にもあります。

逆に、次のいずれかを満たせば成立します。

  • 価格が150万円台まで下がる
  • 屋根を南面だけ先行させ、300万円を数年先送りできる
  • 浴室と台所を後回しにし、初期投資を600万円台に抑える

「買えるか」ではなく「他の選択肢と比べて有利か」で判断する。 これが内見の目的です。

この物件が教えてくれること

判断を分けたのは屋根の面積でした。

104㎡の平屋は、同じ延床の2階建てより屋根面積が大きく、葺き替え費用が跳ね上がります。平屋は暮らしやすい一方で、屋根と基礎の面積が延床と同じだけある。 当たり前のことですが、見積金額で初めて実感する部分です。

平屋を見るときは、屋根の残存年数を最優先で確認する。 これが、この条件から引き出せる教訓です。

出典・参考資料

  1. 国税庁No.7191 登録免許税の税額表(2026年8月参照)
  2. 高知県空き家等に係る媒介報酬規制の見直しについて(令和6年国土交通省告示第949号・令和6年7月1日施行)(2026年8月参照)

制度・税率・統計は改正や更新があります。実際の判断にあたっては、必ず最新の一次資料と、 宅地建物取引業者・税理士・建築士など専門家の確認を経てください。