空き家を購入してから実際にかかる費用

物件価格180万円の空き家を例に、契約から入居後1年までに出ていく金額を項目ごとに並べました。諸費用、片付け、インフラ復旧、最低限の修繕、そして毎年の固定費まで含めた現実的な総額です。

長く使われていない空き家の土間と古い建具
長く使われていない空き家の土間と古い建具

「空き家が180万円で買えた」という話には、たいてい続きがあります。この記事では、その続きの部分だけを書きます。

前提として置くのは、次のような物件です。九州の郊外、築52年の木造平屋、延床82㎡、土地210㎡。5年ほど空き家で、家財が残ったままの状態。上水道あり、下水は浄化槽。物件価格180万円。

1. 契約から引き渡しまで

項目金額補足
物件価格1,800,000円
仲介手数料330,000円後述。2024年7月の改正で上限が変わりました
印紙税1,000円契約書用
登録免許税68,000円固定資産税評価額×2%(土地・建物の所有権移転)
司法書士報酬75,000円
固定資産税の精算21,000円引き渡し日以降の日割り
小計2,295,000円物件価格の +27.5%

契約時点で、すでに230万円です。ここは削れません。

仲介手数料が「思っていた額」と違う理由

ここは多くの記事がまだ古い情報のままなので、詳しく書きます。

従来の計算式なら、180万円の物件の仲介手数料は「価格×5%+消費税」で 92,400円 でした。ところが、2024年(令和6年)7月1日の告示改正で、空き家の仲介手数料の上限が引き上げられています。

改正前改正後(2024年7月1日〜)
対象となる物件価格400万円以下800万円以下
売買の媒介報酬の上限18万円+消費税30万円+消費税(=33万円)

背景には、低額の空き家は現地調査や権利関係の確認に手間がかかるわりに報酬が少なく、不動産業者が扱いたがらないという問題がありました。上限を上げることで流通を促す狙いです。

つまり、180万円の空き家でも33万円を請求されうるということです。実際、九州の空き家取引でも上限額での請求は珍しくなくなっています。

ただし無条件ではありません。この上限を適用するには、媒介契約の締結前に、業者から依頼者へ説明し、合意しておく必要があります。 契約直前に初めて聞かされた場合は、その場で同意せず、内訳の説明を求めてください。

予算を組むときは、低額物件ほど「手数料33万円」を前提に置いておくのが安全です。

2. 引き渡し直後にかかるもの

空き家で最初に発生するのが、片付けとインフラの復旧です。

項目金額補足
残置物の処分280,000円2tトラック4台分。家財・畳・布団
草刈り・庭木の伐採90,000円5年分。竹が入っていると跳ね上がる
水道の開栓・漏水修理65,000円凍結で配管が破断していた
電気の再契約・ブレーカー交換48,000円30A→50Aへ変更
浄化槽の清掃・点検52,000円使用再開時の必須作業
害虫・害獣の処理60,000円天井裏の糞尿処理を含む
小計595,000円

残置物の処分費は、ほぼ確実に発生します。 「家財はそのままでいい」と言われる物件は、その処分費が価格に織り込まれていないだけです。

3. 住み始めるための最低限の工事

「住める状態」にするために、譲れない部分だけを挙げます。

項目金額補足
屋根の部分補修220,000円棟の積み直しと谷板金の交換
雨樋の交換85,000円
給湯器の交換195,000円エコジョーズ・工事込み
トイレの交換165,000円和式から洋式へ
床の張り替え(2部屋)240,000円束の補強を含む
建具の調整・網戸70,000円
火災保険(5年)148,000円築古のため割高
小計1,123,000円

浴室、キッチン、断熱、外壁はここに入れていません。それらを含めれば、さらに200万〜400万円です。

4. ここまでの合計

区分金額
契約〜引き渡し2,295,000円
引き渡し直後595,000円
最低限の工事1,123,000円
合計4,013,000円

物件価格180万円に対して、必要になるのは約401万円。2倍を超えます。

空き家購入の総額内訳。物件価格180万円は全体の45%にすぎず、諸費用49.5万円、引き渡し直後59.5万円、最低限の工事112.3万円が加わって総額401.3万円になる
物件情報に出ているのは、いちばん左の青い部分だけです。残りの55%は、契約してから順番に請求されます。

これは特別に条件の悪いケースではありません。空き家の購入では、物件価格の1.5〜2.5倍が総額になると考えておくのが現実的です。

そして、この総額を左右するのは物件価格ではなく、右側の3つです。物件価格を20万円値切る交渉より、屋根が直っているかどうかのほうが、はるかに大きく効きます。

5. 毎年かかり続けるもの

購入は一度きりですが、維持は続きます。

項目年間
固定資産税・都市計画税35,000円
浄化槽の保守・清掃・法定検査48,000円
火災保険(按分)29,600円
草刈り・庭の管理40,000円
修繕積立(自主的に)100,000円
合計252,600円

年25万円。月にすると約2万1,000円です。住宅ローンがなくても、家は月2万円を要求してきます。

「使わないなら壊せばいい」が簡単でない理由

住宅が建っている土地には、固定資産税の住宅用地特例が適用されています。

区分課税標準
小規模住宅用地(1戸あたり200㎡以下の部分)評価額の6分の1
一般住宅用地(200㎡を超える部分)評価額の3分の1

つまり、解体して更地にするとこの軽減が外れ、土地の固定資産税は最大6倍になります。 建物を壊すのに100万〜180万円を払ったうえで、毎年の税金が上がる。これが空き家が放置されやすい最大の理由です。

さらに2023年の空家等対策特別措置法の改正で、**「管理不全空家等」**という区分が新設されました。放置すれば特定空家になるおそれがあると市区町村長に判断され、勧告を受けると、建物が建っていても住宅用地特例が外れます。

持っているだけ・壊す・放置する。どれを選んでも費用が出ていく構造になっている、という点は購入前に理解しておいてください。

6. どこを削れるのか

現実には、この金額をそのまま用意できないこともあります。削るなら次の順です。

  • 削れる:残置物処分(自分で運ぶ/軽トラを借りる)、草刈り、内装、建具調整
  • 時期をずらせる:床、トイレ、断熱、外壁
  • 削ってはいけない:屋根、雨樋、漏水、電気系統、シロアリ

雨と水と電気は、放置すると被害額が時間に比例して増えます。ここを後回しにして得をしたケースを、DFDはまだ見たことがありません。

まとめ

空き家の購入で本当に必要なのは、物件価格を値切る交渉力ではなく、購入後に出ていく300万円前後を、事前に別枠で確保しておくことです。

物件価格が安いことは、購入判断の入り口にすぎません。判断すべきは、その家を10年維持できる予算があるかどうかです。

出典・参考資料

  1. 国税庁No.7191 登録免許税の税額表(2026年8月参照)
  2. 高知県空き家等に係る媒介報酬規制の見直しについて(令和6年国土交通省告示第949号・令和6年7月1日施行)(2026年8月参照)
  3. 国土交通省固定資産税等の住宅用地特例に係る空き家対策上の措置(2026年8月参照)
  4. 総務省統計局令和5年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計(確報集計)結果(2026年8月参照)

制度・税率・統計は改正や更新があります。実際の判断にあたっては、必ず最新の一次資料と、 宅地建物取引業者・税理士・建築士など専門家の確認を経てください。