地方の中古住宅は本当に安いのか

500万円の家と3,000万円の家。物件価格だけを比べれば地方は圧倒的に安く見えます。しかし取得時の諸費用、修繕、車、そして売却のしにくさまで含めた総額で比較すると、その差は思ったほど単純ではありません。

地方の住宅地に並ぶ築年数の経った戸建て
地方の住宅地に並ぶ築年数の経った戸建て

地方の中古住宅は安い。これは事実です。九州の郊外なら、土地付きの戸建てが300万〜800万円で流通しています。同じ予算では都市部のワンルームも買えません。

ただし「安いから得か」は別の話です。住宅にかかるお金は、物件価格だけでは決まりません。

物件価格だけを比べたときの差

まず、単純な比較から始めます。

都市部の新築戸建て地方の中古戸建て(築40年)
物件価格3,800万円500万円
土地面積100㎡250㎡
延床面積95㎡110㎡

面積は地方が広く、価格は7分の1以下。ここだけ見れば議論の余地はありません。

取得時にかかる「価格以外」

問題はここからです。中古住宅は、価格が下がっても諸費用はあまり下がりません。

項目500万円の中古備考
仲介手数料約23万円400万円超は「価格×3%+6万円+税」
登記費用(登録免許税・司法書士)15〜30万円土地面積が広いと上がる
不動産取得税0〜15万円軽減措置の適用可否で変動
火災保険(5年)10〜25万円築年数と構造で大きく変わる
境界確定・測量0〜80万円未確定なら必要になることがある
合計48〜173万円物件価格の1〜3割に相当する場合も

500万円の家を買うのに、諸費用が100万円を超えることは普通にあります。3,800万円の物件で諸費用200万円なら価格の5%ですが、500万円の物件で100万円なら20%です。価格が下がるほど、諸費用の比率は重くなります。

買ったあとにかかるもの

築40年の家に、そのまま何もせず住み続けられることはまずありません。

  • 給湯器:15万〜25万円(10年前後で寿命)
  • 屋根の点検・補修:20万〜150万円
  • 外壁塗装:80万〜150万円
  • 内窓・断熱:20万〜80万円
  • 水回りの更新:100万〜250万円

すべてを一度にやる必要はありませんが、10年のうちにどれかは必ず来ます。500万円の家に、10年で300万円という数字はごく普通です。

車という固定費

地方で暮らす場合、ほとんどの世帯で車が必要になります。1台あたりの年間コストは、車両の減価分を除いても次のようになります。

項目年間
自動車税3.4万円(普通車1,500cc)
任意保険6〜10万円
車検(按分)5〜7万円
ガソリン10〜18万円
タイヤ・整備3〜5万円
合計27〜43万円

2台持ちなら年間60万〜80万円。10年で600万〜800万円です。この金額は、都市部と地方の住宅価格差を静かに埋めていきます。

そして、売るときの話

最も差が出るのはここです。

都市部の物件は、価格が下がっても買い手がいます。地方の築古住宅は、**「値段の問題ではなく、買い手が現れない」**ことがあります。売却まで2年、3年かかる例も、相続で持て余される例も珍しくありません。

つまり地方の中古住宅は、出口が細い資産です。住み続ける前提なら問題になりませんが、「数年住んで、合わなければ売ればいい」という想定は、地方では成立しにくいと考えてください。

それでも地方の中古住宅を選ぶ理由

ここまで書きましたが、DFDは地方の中古住宅を否定していません。総額で見ても、条件次第で十分に合理的です。

成立しやすいのは次のような場合です。

  • 住宅ローンを組まない、または借入額が小さい
  • その土地に長く住む見込みがある
  • 修繕予算を最初から別に確保している
  • 広さそのものに価値を感じている(作業場、庭、駐車スペース)

逆に、「安いから」だけを理由に選ぶと、諸費用と修繕で想定が崩れます。

まとめ

地方の中古住宅は、物件価格では圧倒的に安く、総額では思ったほど安くありません。それでも、支出の総額を最初から把握したうえで選ぶなら、依然として強い選択肢です。

比べるべきは物件価格ではなく、10年間に出ていくお金の総額です。次は空き家を購入してから実際にかかる費用で、購入後の内訳をさらに細かく見ていきます。

出典・参考資料

  1. 総務省統計局令和5年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計(確報集計)結果(2026年8月参照)
  2. 高知県空き家等に係る媒介報酬規制の見直しについて(令和6年国土交通省告示第949号・令和6年7月1日施行)(2026年8月参照)
  3. 国税庁No.7191 登録免許税の税額表(2026年8月参照)

制度・税率・統計は改正や更新があります。実際の判断にあたっては、必ず最新の一次資料と、 宅地建物取引業者・税理士・建築士など専門家の確認を経てください。