古民家を買う前に確認したい10のこと
価格や雰囲気ではなく、購入後に効いてくる10項目。構造、屋根、基礎、水回り、上下水道、接道、境界、雨漏り跡、シロアリ、そして予算の上限について、内見時に確認すべき点をまとめました。
古民家を見に行くと、たいていの人は最初の10分で気持ちが決まります。梁の太さ、土間の広さ、庭から入る光。それ自体は悪いことではありません。ただし、その10分で見えているものと、購入後に支払うことになる金額はほとんど関係がありません。
ここでは、内見のときに必ず確認しておきたい10項目を挙げます。どれも、後から「聞いておけばよかった」となりやすいものです。
1. 屋根がいつ、どこまで直されているか
古民家で最も高額になりやすいのが屋根です。瓦の葺き替えは規模にもよりますが150万〜400万円、下地(野地板・垂木)まで傷んでいれば、そこからさらに積み上がります。
確認するのは「何年前に、どの範囲を直したか」です。「10年前に直した」と言われても、棟だけの部分補修と全面葺き替えではまったく意味が違います。可能であれば、当時の見積書か請求書を見せてもらってください。
2. 小屋裏に雨漏りの跡があるか
天井裏(小屋裏)を覗かせてもらえるなら、必ず見ます。見るのは水のシミです。乾いた黒いシミは過去の雨漏り、白っぽい跡は雨水が繰り返し通った跡です。
このとき、シミの位置と屋根の谷(屋根面が合わさる部分)が一致していないか確認します。谷板金は雨漏りの定番箇所で、直すには足場が必要になります。
3. 床の傾きと沈み
家の中を歩いて、床が沈む場所、傾いている場所を探します。ビー玉を転がすまでしなくても、体感で分かる傾きがあればそれは相当なものです。
沈みの原因は、床束の腐朽、白蟻、または基礎そのものの不同沈下です。前二つは比較的直せますが、地盤に起因する沈下は費用が読めません。
4. 基礎の形式
古民家の多くは、石の上に柱を載せた「石場建て」です。現在の建築基準の基礎とは違いますが、それ自体が悪いわけではありません。問題になるのは次のような場合です。
- 束石が沈んでいる、または割れている
- あとから打たれたコンクリートが割れている
- 土台が地面と接している(腐りやすい)
5. シロアリの痕跡
床下に入れるなら、土台と大引きを見ます。入れない場合でも、玄関框、風呂場まわり、北側の柱の足元を軽く叩いて音を確認します。空洞音がすれば内部が食われている可能性があります。
被害があった場合、駆除だけなら十数万円ですが、構造材の交換が必要になると数十万〜数百万円の話になります。
6. 上下水道と浄化槽
これは見落とされがちですが、費用に直結します。
| 項目 | 確認すること | 想定費用 |
|---|---|---|
| 上水道 | 本管が来ているか、井戸か | 引込工事 30〜80万円 |
| 下水道 | 公共下水か、浄化槽か、汲み取りか | 浄化槽新設 80〜120万円 |
| 浄化槽 | 設置年、清掃・保守の履歴 | 年間維持費 4〜6万円 |
「井戸だから水道代がかからない」という説明を受けることがありますが、ポンプの交換費用と水質検査は必要です。
7. 接道と再建築の可否
前面道路が建築基準法上の道路かどうか、幅員が4m以上あるか、間口が2m以上接しているか。ここが満たされていない場合、その家は建て替えができません。
再建築不可は必ずしも「買ってはいけない」を意味しませんが、住宅ローンが使えない、将来売りにくい、という条件が付いてきます。詳しくは再建築不可の古民家は買ってもいいのかにまとめました。
8. 境界が確定しているか
地方の古い土地は、境界標がない、あっても位置が曖昧、隣地との認識がずれている、というケースが珍しくありません。
境界確定測量は、隣地の数と状況によりますが40万〜80万円ほどかかります。誰が費用を負担するのかを、契約前に決めておく必要があります。
9. 電気容量と配線
古民家では、契約アンペアが20A、30Aのままになっていることがあります。IHや電気温水器、エアコンを複数使うなら容量の変更と分電盤の交換が必要です。
また、碍子引き配線が残っている場合は、屋内配線の全面やり替えを見ておいた方が安全です。100㎡程度で60万〜120万円が目安になります。
10. 自分の予算の上限を、先に決めているか
最後は物件ではなく自分の話です。
古民家の改修は、開けてみないと分からない部分が必ず残ります。だからこそ、「ここまで出したら撤退する」という金額を、契約前に決めておく必要があります。これを決めずに始めると、判断の基準が「せっかくここまでやったから」に置き換わっていきます。
まとめ
10項目のうち、6項目は現地で目視できます。残りは書類と行政窓口で確認する内容です。内見の前に、この記事をそのまま印刷して持っていくくらいで構いません。
物件は逃げますが、無理な買い方をした家からは逃げられません。急かされたときほど、この10項目に戻ってください。
出典・参考資料
- 国税庁No.7191 登録免許税の税額表(2026年8月参照)
- 高知県空き家等に係る媒介報酬規制の見直しについて(令和6年国土交通省告示第949号・令和6年7月1日施行)(2026年8月参照)
- e-Gov法令検索建築基準法 第43条(敷地等と道路との関係)
制度・税率・統計は改正や更新があります。実際の判断にあたっては、必ず最新の一次資料と、 宅地建物取引業者・税理士・建築士など専門家の確認を経てください。