古民家を買うなら不動産価格以外を見る

300万円の古民家と800万円の古民家。総額で逆転することは珍しくありません。判断すべきは価格ではなく、屋根・構造・水回り・インフラという「あとから動かせない部分」の状態です。

瓦屋根の古民家を外から見た様子
瓦屋根の古民家を外から見た様子

同じ地域で、300万円の古民家と800万円の古民家が売りに出ているとします。多くの人は300万円のほうから見に行きます。

しかし、住める状態にするまでの総額で見ると、この2つは逆転することがあります。実際にあった比較を、数字にして並べます。

2つの物件の比較

A物件B物件
物件価格3,000,000円8,000,000円
築年数築68年築54年
延床118㎡96㎡
屋根25年前に葺き替え、谷から雨漏り6年前に全面葺き替え済み
基礎・土台一部にシロアリ被害健全
水回り汲み取り式、風呂は五右衛門風呂8年前に全面改修済み
上下水道井戸、下水未接続公営水道、浄化槽(5年前設置)
電気30A、碍子引き配線が残る60A、10年前に配線更新
断熱なし内窓・床下断熱あり

住めるようにするまでの費用

工事A物件B物件
屋根(葺き替え・谷板金)2,600,000円0円
シロアリ駆除・土台交換1,400,000円0円
浄化槽新設950,000円0円
上水道の引込480,000円0円
浴室の全面改修1,300,000円0円
キッチン850,000円0円
屋内配線・分電盤900,000円0円
内窓・床下断熱700,000円0円
内装(最低限)600,000円300,000円
工事費合計9,780,000円300,000円

総額

A物件B物件
物件価格3,000,000円8,000,000円
諸費用(約8%)260,000円520,000円
工事費9,780,000円300,000円
総額13,040,000円8,820,000円

300万円の家のほうが、422万円高くつきました。

A物件は物件価格300万円だが工事費978万円がかかり総額1304万円。B物件は物件価格800万円だが工事費30万円で総額882万円。安い物件のほうが422万円高くつく
物件価格(青)だけを見ると2.7倍の差ですが、工事費(茶)を足すと順位が逆転します。B物件が高いのは、前の所有者がすでに払ったからです。

しかもA物件は、工事期間中に住めません。仮住まいの家賃を月6万円、工期を8か月とすれば、さらに48万円が乗ります。

あとから動かせない部分

この差を生んでいるのは、次の4項目です。

1. 屋根

最も高額で、最も先送りできません。雨が入っている家は、待っている間に構造材が傷みます。「10年以内に葺き替え済みか」だけでも聞く価値があります。

2. 構造(土台・柱・基礎)

シロアリ被害と腐朽は、内装をどれだけ綺麗にしても解決しません。逆に、ここさえ健全なら、他はいつでも直せます。

3. 水回りとインフラ

浄化槽の新設、上水道の引込、汲み取りからの転換。これらは合計で200万円前後になり、しかも見た目には何も変わりません。支払っても暮らしが良くなった実感が薄い費用なので、後回しにされがちですが、避けられません。

4. 電気容量と配線

碍子引き配線が残っている家は、屋内配線をやり直す前提で考えてください。火災リスクに直結します。

逆に、後からどうにでもなるもの

  • 内装(壁、床の仕上げ、建具)
  • キッチン・洗面の設備グレード
  • 庭の状態
  • 残置物
  • 掃除で解決する汚れ、匂い

内見のときに印象を左右するのは、たいていこちら側です。きれいな家は良く見え、汚い家は悪く見える。しかし金額を決めるのは、見た目ではない部分です。

判断のための質問リスト

売主または仲介業者に、次を聞いてください。答えられない場合、それ自体が情報です。

  1. 屋根を最後に直したのはいつ、どの範囲か
  2. 雨漏りの履歴はあるか
  3. シロアリの駆除・予防をしたことはあるか。いつか
  4. 上水道は公営か井戸か
  5. 排水は公共下水か、浄化槽か、汲み取りか。浄化槽なら設置年
  6. 契約アンペア数と、屋内配線を更新した時期
  7. 直近5年でどこを工事したか。見積書は残っているか
  8. 前所有者はいつまで住んでいたか

8番は特に有効です。 人が住まなくなってからの年数と、建物の傷み方はきれいに比例します。空き家期間が2年以内なら状態は比較的良く、10年を超えていれば覚悟が要ります。

まとめ

古民家の購入で見るべきは、価格ではなく**「あとから動かせない部分がどれだけ済んでいるか」**です。

すでに直っている家は高い。それは、直した人が払ったからです。安い家を買うということは、その支払いを自分が引き受けるということです。

どちらを選ぶかは予算と時間の問題ですが、比べるべきは物件価格ではなく総額だという点だけは変わりません。

出典・参考資料

  1. 国税庁No.7191 登録免許税の税額表(2026年8月参照)
  2. 高知県空き家等に係る媒介報酬規制の見直しについて(令和6年国土交通省告示第949号・令和6年7月1日施行)(2026年8月参照)

制度・税率・統計は改正や更新があります。実際の判断にあたっては、必ず最新の一次資料と、 宅地建物取引業者・税理士・建築士など専門家の確認を経てください。