古民家をDIYする前に知っておきたいこと

自分でやれば安く済む、は半分だけ正しい。DIYで成立する作業とプロに任せるべき作業の線引き、工具にかかる初期費用、そして「時間」という最大のコストについて書いています。

解体途中の古民家の内部と工具
解体途中の古民家の内部と工具

古民家の改修費用を抑える方法として、DIYはたしかに有効です。ただし「自分でやれば安い」は、工事の種類によって当たったり外れたりします。

判断の基準は3つです。失敗したときのやり直し費用、必要な資格、そして時間。

DIYで成立する作業

比較的、素人がやってもリスクが小さい作業です。

作業業者に頼んだ場合DIYの材料費難易度
内装の解体(壁・天井)15万〜40万円処分費のみ 3万〜10万円低
塗装(壁・木部)10万〜30万円2万〜6万円低
珪藻土・漆喰塗り20万〜50万円5万〜12万円中
床の根太・合板張り15万〜35万円6万〜12万円中
断熱材の充填20万〜50万円8万〜18万円中
建具の調整・清掃5万〜15万円数千円低
草刈り・庭木の伐採5万〜15万円道具代低

このうち、費用対効果が突出しているのが解体です。技術がほとんど要らず、金額が大きく、しかも家の状態を自分の目で確認できます。DFDが最初にやるのも常にここです。

ただし、次の点だけは守ってください。

  • 筋交いと構造材は絶対に落とさない
  • 古い建材にアスベストが含まれる可能性がある(吹き付け材、スレート板、一部の壁材)
  • 天井裏の埃と獣糞は防塵マスク(DS2以上)で対応する
  • 釘の踏み抜きに備え、踏み抜き防止インソールを入れる

アスベストは、疑わしければ調査してください。 2022年以降、一定規模の解体・改修工事では事前調査が義務化されています。自分の家であっても、吸えば同じです。

プロに任せるべき作業

次は、資格が必要か、失敗したときの損害が大きい作業です。

  • 電気工事:屋内配線は第二種電気工事士の資格が必要(無資格施工は違法)
  • ガス:ガス機器の接続は有資格者のみ
  • 給排水:指定給水装置工事事業者でなければ本管に触れない
  • 屋根:高所作業。落ちれば終わる
  • 構造補強:耐震の計算が必要。素人判断の補強は効かないことが多い
  • 基礎・土台の交換:家を持ち上げる工事。失敗の代償が大きい

「コンセントを増やすくらい自分でやった」という話をよく聞きますが、これは違法であり、火災時に保険が下りない可能性があります。電気は必ず有資格者に。

工具にいくらかかるか

DIYを始めるときに見落とされるのが初期投資です。最低限のラインを挙げます。

工具価格帯必要度
インパクトドライバー(18V)15,000〜30,000円必須
丸ノコ8,000〜20,000円必須
差し金・水平器・墨つぼ5,000円必須
バール・ハンマー・釘抜き6,000円解体に必須
集塵機・掃除機15,000〜40,000円ほぼ必須
脚立・足場板20,000〜50,000円必須
防塵マスク・保護メガネ・手袋8,000円必須
レーザー墨出し器15,000〜40,000円あると精度が変わる
卓上スライド丸ノコ25,000〜60,000円量をこなすなら
合計10万〜25万円

工具は資産として残りますが、最初の1軒では確実に費用として乗ってきます。

最大のコストは時間

ここが本題です。

6畳一間の内装をDIYでやり直すと、解体・下地・断熱・仕上げまで含めて、慣れていない人で延べ40〜80時間かかります。週末だけなら2〜4か月です。

同じ工事を業者に頼めば、1〜2週間で終わります。差額が30万円だとして、80時間を投じて30万円。時給に直すと3,750円です。

この計算をどう受け取るかは人によります。

  • 本業の時給がこれより高い人:DIYは趣味としてやるべきで、節約手段としては合わない
  • 時間に余裕がある人・作業自体が好きな人:十分に合う
  • 住みながら改修する人:工期が延びる分、生活の質が落ち続けることを計算に入れる

DFDの結論は、**「解体と塗装と草刈りは自分で、それ以外は原則プロ」**です。これが金額と時間のバランスとして最も安定します。

順番を間違えない

DIYで最も多い失敗は、順番です。

正しい順序は、雨仕舞い → 構造 → 断熱 → 下地 → 設備 → 仕上げ です。

仕上げから手を付けると、後で必ずやり直しになります。壁を綺麗に塗った半年後に、その裏から雨漏りが出るという事故が本当に起きます。

まとめ

DIYは、費用を下げる手段であると同時に、家の状態を自分の手で把握する手段でもあります。後者の価値は、金額に換算しにくいところで効いてきます。

ただし、電気とガスと水道と屋根には手を出さない。ここだけは守ってください。

出典・参考資料

  1. e-Gov法令検索電気工事士法(一般用電気工作物の作業に関する資格)
  2. 厚生労働省石綿障害予防規則にもとづく解体・改修工事前の事前調査

制度・税率・統計は改正や更新があります。実際の判断にあたっては、必ず最新の一次資料と、 宅地建物取引業者・税理士・建築士など専門家の確認を経てください。